目次
あなたは巻き舌、できますか?
- 「巻き舌は昔からどうしてもできない。遺伝で出来ないのでは?」
- 「椎名林檎さんや米津玄師さんの巻き舌を歌で真似したい」
- 「ボイトレで巻き舌やらされたけど、何の意味があるの?」
- 「声楽を習っているけど、イタリア語の巻き舌ができなくて悩んでいる」
こんな悩みをお持ちでないですか?
こんにちは。テノール歌手・ボイストレーナーの岩井翔平です。このブログでは、歌や音楽に関する情報を発信しています。
私もウォームアップで毎日使っている「巻き舌」について、今回は紹介します。
巻き舌とはメリットが多く、有名な練習法です。
しかし、
「やらされたことあるけど、どんな効果があるかは知らない」
「どうしてもできない!」という方が多いです。
また、声楽では、巻き舌は避けて通ることが出来ないため、真剣に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
元・巻き舌できなかった声楽家11人からの取材も
元・巻き舌できなかった声楽家11人からの取材、20本の記事、20本の動画も参考にさせていただきました。
情報量を網羅した上に、それを分かりやすく整理しました。お役に立てると嬉しいです。
私は、島根大学教育学部と東京芸術大学で、2度大学生をしました。そのため、教えるスキルと歌の専門性を両方兼ね備えています。
もしこの記事が面白いと思ったら、コンサートや体験レッスンをぜひご検討ください(オンラインレッスンも承っています)
【※注意】ネットでの情報収集&独学での練習は、あくまで自己責任で参考程度になります。
理由は、一方的かつ、文章のみのコミュニケーションでは、あなたがこの文章を通してどう理解し、どう実践するのか、フォームに危険性がないかを判断することが不可能だからです。
万が一痛いなどトラブルがある場合、中断してください。
自分がやっていることができているか否かのチェックを希望される方は、ぜひ個人レッスンへのお申込みをご検討ください。
1周回って知らない!?巻き舌の基礎知識
巻き舌の仕組み
「な〜んだ!出来なかったのは、単に仕組みを知らなかっただけじゃん!」
という可能性もあるので、まずは知るところから始めましょう!!
巻き舌は、子音の一種です(ここが地味に重要)。
専門的には、歯茎ふるえ音(しけいふるえおん)と言います。「はぐき」とは読まないので気をつけてください。
舌の位置は、タ行・ダ行を発音するところのちょっと後ろになります。
私は巻き舌が生まれつき出来るので、実は、舌の位置は厳密じゃなくても出来ちゃいます(笑)しかし、今出来ない方は、まずは位置を守った方が習得しやすいのではないか?と考えています。
ここに舌を優しく当てて息を送ると、息の力で舌が振動する子音です。
旗が風になびいているとき、決して旗自身の力で揺れているのではなく、風の力で揺れているイメージで、決して舌が自分の力でふるえているわけではありません。(厳密には、ベルヌーイの定理という法則で動いています)
また、「巻き舌」という名前ですが、舌を一切巻いたりはしないので、誤解に注意です。
専門用語にあるように「舌がふるえる」子音です。
日本語には巻き舌がない
基本的に、日本語には巻き舌がありません。だから日本人は苦手だとされています。
しかし、江戸っ子言葉や、ヤンキー言葉など、表現として使うことはあります。
特にヤンキー言葉のイメージから、巻き舌は品がないイメージが日本にはあり、余計にできない人が多いのではないか?と説明している記事もありました。
また、JPOPの歌手では、椎名林檎さんや、米津玄師さんなど巻き舌を使用する歌手もいます。
例えば、米津玄師さんの《Flamingo》という曲では、歌詞に巻き舌を織り交ぜるだけでなく、効果音としても巻き舌を取り入れています。
声楽を勉強している方は避けて通れない!
声楽を勉強すると、巻き舌を使う外国語を歌うことから避けられません。
イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、スペイン語、古いイギリス英語、ラテン語など、声楽で出てくる言語には巻き舌が含まれます。
これらの言語を避けて声楽を勉強することは不可能。だから声楽家にとって巻き舌は必修です。
ここまで、一度まとめておきましょう!
効果大!巻き舌の3つのメリット
巻き舌での発声練習をタングトリル(tongue trill)と言います。他にもタントリル、タンロールなどとも呼ばれていて、ボイトレではかなり有名です。メリットが本当に多いので、この記事に辿り着いたあなたにも知って欲しいです!
【巻き舌の3つメリット】
- 舌のリラックスになる
- 大きな声を出せないところでも練習できる
- ミックスボイスの練習になる
1.舌のリラックスになる
ここだけの話、多くの初心者の方が、歌うと舌に過剰な力が入ります。
歌うと舌に力が入る人には、こんな特徴があります↓
- 舌の中央がくぼみ、アルファベットの「U」の形になっている。
- 舌が後ろに引っ込んでいる。
このような方は、タングトリルを行うことで、歌うときに無駄な力が抜ける可能性があります。また、人によっては、話し声まで変わってしまうこともあるでしょう。
更に、舌は、顎や首の筋肉とも密接に関係があります。そのため、舌以外にも、喉まわりの筋肉のリラックスにもなり、ウォームアップとして使えます。朝は声が出にくい!という方にオススメです。
私も朝の練習メニューに入れています。
2.大きな声を出せないところでも練習できる
タングトリルは、普通の声で歌うよりも音量が小さくなります。住んでいる家によっては、家で歌うことが難しい方もいます。わざわざカラオケに行って練習をするのは、ハードルがぐんと上がってしまいます。
オススメは、家事をしながら、タングトリルをすることです。
心理学では「既に習慣になっていることとセットにすると継続しやすい」ということが分かっています。ぜひ試してみましょう
また、歌手にとっては、本番前の舞台袖でもできる練習法ですので、オススメです。
3.ミックスボイスの練習になる
普通の声で練習するよりも、地声と裏声の行き来がスムーズになりやすいです。これができると音域も広がってくるでしょう。
※ミックスボイスは丁寧な説明が必要な分野になるので、今回は詳細の説明は省略します。
つまり、高い音を出せるようになるためにも、非常に重要な練習なのです。
舌の存在をナメたらアカン!舌は意外とデカい
まずはこちらの動画をご覧ください↓
これは、歌っているときの体内の様子を、MRIで撮影したものです。
舌、めっちゃデカくないですか???
言葉を発する過程で、舌はこんなにも大きく動きます。この舌が硬くなりやすいと、歌いにくさに直結しそうなのは、この映像を見ればあなたも想像がつくのではないでしょうか?
巻き舌ができない5つの原因
- 舌の動きが悪くなっている
- 舌の力み
- 顎・首・肩の力み
- 呼吸のコントロール不足
- 【番外編】舌小帯短縮症
それでは、ひとつずつ確認していきましょう
1.舌の動きが悪くなっている
多くの動画、記事で「舌の筋力不足」として原因を挙げていましたが、私はこれは誤解を招くのではないかと考えています。
というのも、筋力不足というと、例えば「10キロのダンベルを持ち上げたかったけど、5キロまでしか出来なかった」ということを言うはずです。
筋力は全く関係ないとは言い切れません。しかし、タングトリルで必要なのは脱力であり、筋力という説明は少々誤解を招くのではないでしょうか。
それよりかは
- 巻き舌という運動に舌が慣れていない
- 舌の動きが悪くなっている
- 舌のコントロール力が落ちている
- 舌の柔軟性、持久力が落ちている
こういったことが原因だと私は考えています。
こういったトラブルを解消するために、舌を動かしてトレーニングするのであり、筋力と言えるかは疑問です。また、こういった理由で安易に「鍛える」という言葉を使うことも、注意が必要です。
2.舌の力み
先ほど、巻き舌が起きる仕組みとして、旗が風に揺れる例えを使用しました。
では、この例えを応用させて更に考えを深めてみましょう。
旗の生地が柔らかいものと、硬い生地、どちらが風に揺れやすいでしょうか?・・・そう、生地が柔らかいものです。
同様に、舌も脱力していて柔らかいほど巻き舌は起きやすいです。
また、舌を上顎に「優しく当てる」ことも大切です。もし舌を強く押し付ければ、それだけ息も強くないと振動が起きなくなります。出来ないでムキになってしまうと、かえって成功は遠のいてしまいます。
3.顎・首・肩の力み
舌だけに力が入っているのではなく、意気込んでしまい、上半身に力が入っていることで、舌にも力が入ってしまっていることもあります。
これらが力んでいると、呼吸の浅さにも繋がるので、そもそもタングトリルを起こすエネルギーである息のコントロールが上手くいっていない可能性もあります。
ここで大切な考え方が、「舌が力んでいるからといって、緩める場所も舌とは限らない」ということ。
つまり、問題点=改善点とは限らないのです。離れた体の部分も原因かも知れない、と原因を探っていくといいでしょう。この点については以前ブログを書いています↓
4.呼吸のコントロール不足
「巻き舌の基礎知識」でもお話しましたが、巻き舌を起こすのは息のエネルギーです。
つまり、巻き舌を起こすだけの息のコントロールが出来ないと、特に初期の頃は感覚がつかみにくいでしょう。
「巻き舌練習サボって、呼吸の練習だけしていたら、いつの間にか巻き舌も出来るようになっていた」
という場合も、人によってはあるでしょう。
5.【番外編】舌小帯短縮症(ぜっしょうたいたんしゅくしょう)
←舌小帯(ぜっしょうたい)は、舌の裏側の下顎にくっついている筋のことを言います。ちなみに、これは通常の舌小帯です。
これが短い方のことを舌小帯短縮症と言います。舌を上顎につけたり、舌を前に出しづらかったりするそうです。ただ、手術で改善することが可能です。
私が取材した声楽家の方の中には、巻き舌のために、手術をしたという方もいました。今はそれで巻き舌はできるようになったそうです。とても多くの人の希望になるエピソードですね。
舌の長さや遺伝は関係ある?
結論から言うと、やりやすさへの影響はあるかもだけど、全く出来ない原因になり得るかどうかは、よくわかりませんでした。
「あくまでこれらは一説でしかなく、巻き舌を諦める必要はない」という記事が多かったです。
また、「巻き舌がある外国語を話す国民は、みんな巻き舌ができるはず」と言っている動画もありまし。しかし、それには疑問です。
調べたところによると、外国の方でも、母国語に巻き舌があるのに苦戦している人はいるようです。子どもの頃に猛特訓することもあるとか。
確かに、考えてみれば日本人でも、カ行や、サ行がうまく言えない大人がいますよね。同様に、イタリア人はみんな巻き舌ができる、というわけではないでしょう
私が現時点で言えることは、先天的に出来ないと決めつけず、長期的に練習することが大切なのではないか、と考えられます。
「巻き舌」やり方大全、公開!〜全く出来ない!から応用まで
それでは、これらを踏まえて、次回は巻き舌の練習法になります。
研究をしたところ、巻き舌の練習法が本当にたくさんありました。
そういったたくさんの練習法を並べているうちに、似ているものや、練習のねらいが同じものがありました。それを整理して、どの記事よりも分かりやすく、網羅した記事を後編で紹介しています↓
お知らせ
岩井翔平ボイストレーニングサロンでは、現在生徒募集中で、体験レッスンを実施しています。初心者の方からプロ志望の方まで、幅広くレッスンに通っています。
よく「ボイトレはプロを目指す人が通うイメージ」と言われます。
しかし、ジムにはボディービルダーだけでなく、一般の方も多く通っているように、ボイトレも気軽に通う場所であって欲しいと願っています。
声は、磨けば一生使えるもの。外見と同じくらい、相手からの印象に関わります。外見に気を遣っている人は多いですが、声に気を遣っている人はまだ少ないです。だから声を磨くだけで、一歩リードすることが出来ます。
初めはとても緊張すると思いますが、優しく丁寧にレッスンします。お問い合わせは下記のLINEか、お問い合わせからどうぞ!
【お問い合わせ方法その①】公式LINEへ登録↓
【お問い合わせ方法その②】このHPのお問い合わせフォームから↓
【毎日投稿中のTwitterのご紹介】
また、Twitterで歌や声に関する情報を、ほぼ毎日1投稿、発信しています。きっとお役に立てると思うので、いくつかツイートを読んでためになったら、是非フォローしてみてください。