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アポトーシスってどんな意味?
あなたは、死について考えたことがありますか?
こんにちは、テノール歌手・ボイストレーナーの岩井翔平です。私は子供の頃、特に死ぬのが怖かったです。
今回の、Official髭男dismの新曲《アポトーシス》は「定められた死」をテーマにした曲で、今まさに話題になっています。
アポトーシスとはどういう意味でしょうか?
これついて、ボーカルの藤原さん自身が語っています。
藤原:「定められた死」というか細胞がどんどん壊れて死んでいくっていう…。
出典:https://www.youtube.com/watch?v=yTf3EALZnE4
例えば、木の葉っぱが紅葉して、最後枯れて木から離れて落ちていく。タイトルの「アポトーシス」っていうのは、プログラム細胞死っていうことなんですけど…
つまり、「細胞がいい状態を保つために、古い細胞が自殺すること」といったところでしょうか。
衝撃。著者は、ボーカルの藤原さんと大学の同期だった!
あとで分かったのですが、実は、私はボーカルの藤原さんと同い年で、島根大学で同期だったようです。
学部も違うので全く面識はなく、お話ししてみたかったな…といつも後悔しています。
しかも私は、音楽で上京する夢を持ちながら島根大学で過ごすという経験が、藤原さんと全く同じなのです。
髭男はその頃の想いを曲したものが多いため、私は共感しすぎて泣いてしまうことがあります。それ位、1人のファンでもあります。
藤原さんの 30歳の誕生日の前日にアルバム発売!
この《アポトーシス》が収録されているアルバム「Editorial」は、2021年8月18日に発売されています。
なんと、この翌日、8月19日は藤原さんの30歳の誕生日でした。
つまり、このアルバムは藤原さんにとって20代最後の集大成だったと言えるでしょう。
また、先ほど公開されたばかりの動画でも、アポトーシスに対する想いを語っています。
藤原:自分が29歳になって、「20代で残されたのはあと1年」っていう風になったときに、
出典:https://www.youtube.com/watch?v=yTf3EALZnE4
「いつまでみんな元気でいられるだろうか?」とか「みんな自分の大事な人はいつまで元気でいてくれるんだろうね?」ってことを、すごくその瞬間に考えまして・・・
このように、20代の終わりがきっかけで、人生や死を見つめた曲となっています。
「死」をテーマにした曲が、アルバムの2曲目という異例の配置
ここまで見てきたように、「アポトーシス」は「定められた死」がメインテーマ。
しかし「藤原さんの、20代の終わり」も、大きな裏テーマです。私は、この曲にものすごく思い入れがあるように思えてなりません。
その根拠は、この曲がアルバムの2曲目に入っていることです。これは、とても異例なことだと、私は感じます。
普通、アルバムの2曲目には、アップテンポな曲や、すでにシングルとして出回った曲が多いです。このアルバムなら、3曲目に入っている「I LOVE…」あたりが2曲目に来るのが妥当では?
しかも、「アポトーシス」の曲の長さは6分27秒。これは、このアルバム「Editorial」で一番長い曲ということになります。
アポトーシス〜歌詞の意味・解釈の徹底考察
1番Aメロ〜「訪れる」と「恐るる」
訪れるべき時が来た もしその時は悲しまないでダーリン
こんな話をそろそろ しなくちゃならないほど素敵になったね
恐るるに足る将来に あんまりひどく怯えないでダーリン
そう言った私の方こそ 怖くてたまらないけど
出典:アポトーシス/作詞・作曲 藤原聡
・「訪れる」と「恐るる」
髭男の歌詞はよく韻を踏みます。しかし、ここでは、あえて「恐れる」ではなく、「恐るる」を使っています。
「恐れる」にした方が「訪れる」に音が近くなり、韻が踏めると思いませんか?
それなのに、今回あえて韻を踏まなかったのは、それより優先したいことがあったのではないでしょうか?
母音は、それぞれ違った印象を与えます。
エ母音はやや明るい印象、ウ母音は深くて暗い印象になります。
つまり、「恐れる」より「恐るる」の方が、暗いところで縮こまって震えている、印象を与えることができます。
ご本人がどこまで意識したかは不明ですが、この言葉選びは面白いですね。
・「素敵になった」の意味
長年の時間を共に歩んだ夫婦だと仮定すると、お互い老いているでしょう。シワや白髪も増えているかもしれません。
こう言ったことを考えると、これは外見的で表面的な「素敵」ではないと考えられます。
それより内面的な意味や、「老いる」ということをポジティブに捉えて「素敵」と言っていること考えられますね。
1番Bメロ〜空と向き合う蝉という言葉選びの深さ
さよならはいつしか 確実に近づく
落ち葉も空と向き合う蝉も 私達と同じ世界を同じ様に生きたの
出典:アポトーシス/作詞・作曲 藤原聡
・空と向き合う蝉
ここで、蝉の特徴を考えてみましょう。
- 6年近く地中で過ごし、成虫になってからは1週間〜1ヶ月しか生きられない
- 成虫になると、オスは求愛行動のため、ものすごい音量で鳴く
- 寿命が尽きて地面に落ち、仰向けで転がったまま役目を終えます。
ちなみに、鳴き声が大きいオスほどモテるそうです。音大声楽科と一緒やないか(笑)
つまり、「アポトーシス」の歌詞で蝉とは、人生の短さ、儚さを象徴していると思われます。
そして、やはり成虫になり激しく鳴く蝉は、地元から上京して一気に駆け抜けた、藤原さんの20代の自分でもある気がしてなりません。
(もちろん、これでもう髭男は終わり、とか言う意味ではないです。)
そして、仰向けのまま地面に落ちて死んでしまっているセミを「空と向き合う」と表現したのは、素晴らしいですね。
このように、この曲での、死に対してポジティブな言葉選びも注目です。
1番サビ〜鐘が象徴するものとは?
今宵も鐘が鳴る方角は お祭りの後みたいに鎮まり返ってる
なるべく遠くへ行こうと 私達は焦る
似た者同士の街の中 空っぽ同士の胸で今
鼓動を強めて未来へとひた走る
別れの時など 目の端にも映らないように そう言い聞かすように
出典:アポトーシス/作詞・作曲 藤原聡
・「鐘」って何?
鐘というと、①宗教的な施設にあることが多い。②時間を知らせるもの、です。
また、「鎮まり返ってる」という言葉が出てきます。この「鎮」の漢字にも、宗教的な意味合いがあります。
また、この漢字の熟語に「鎮魂」という言葉もあり、これは人の魂を鎮めるという意味です。
これらを踏まえて考えると、鐘の意味は、死の象徴とか、死の時間を知らせるものという感じでしょうか。
とはいっても、死神のような、不気味で恐ろしいもの、というわけではなさそう。
どちらかというと「フランダースの犬」の最終回みたいな、穏やかに天使が迎えてくれるようなイメージだと、私は考えています。(サビの曲調などからそう感じます)
・死を感じないほど忙しく生きる、若かりし頃
「鼓動」は心臓の音のことなので、生の象徴でしょう。つまり鐘とは反対の意味の象徴となりますね。
焦って、死の方角から遠くへ行こうと、走り続ける。そんな若い頃のことを描いているところですね。
2番Aメロ〜ゆっくり迫りくる老い。ギャップ法の活用とは?
いつの間にやらどこかが 絶えず痛み出しうんざりしてしまうね
ロウソクの増えたケーキも 食べ切れる量は減り続けるし
吹き消した後で包まれた この幸せがいつか終わってしまうなんて
あんまりだって誰彼に 泣き縋りそうになるけど
出典:アポトーシス/作詞・作曲 藤原聡
・ギャップ法とは
これはコピーライターの佐々木圭一さんのベストセラー「伝え方が9割」に登場する、インパクトを与える文章を作る方法です。
至って簡単で、「反対の言葉を使う」という方法です。
例えば、オバマ大統領が選挙に勝ったときの演説で「これは私の勝利ではない、あなたたち(国民)の勝利だ」と言ったそうです。「私」と「あなたたち」が反対になっています。
これを「これは、あなたたちの勝利だ」だけ言うと、ちょっとインパクトが薄れますよね。
「ロウソクの増えたケーキも 食べ切れる量は減り続けるし」
この歌詞では「増えた」と「減り続ける」が反対になっています。
ここで、もし「食べ切れる量が減ってきた」だけだと、よくあるシルバー川柳になっていたかも知れませんね(笑)
「増えたロウソク」の描写があるからこそ、静かにやって来ている「老い」を、より切なく感じられるのではないでしょうか?
2番サビ〜水や水滴が表すものとは?
今宵も明かりのないリビングで 思い出と不意に出くわしやるせなさを背負い
水を飲み干しシンクに グラスが横たわる
空っぽ同士の胸の中 眠れぬ同士の部屋で今
水滴の付いた命が今日を終える
解説もないまま 次のページをめくる世界に戸惑いながら
出典:アポトーシス/作詞・作曲 藤原聡
ここで、「水を飲み干す」「水滴の付いた命」という言葉が出てきます。
水は、生き物が生きる上で欠かせないものであることから、これは生の象徴でしょう。
ここは全体的に、死期が迫っている描写のように感じ取れます。
主人公が飲み干したグラスを、旦那さんが洗う余裕がないほど切迫した状況が感じ取れます。
また、「飲み干す」という言葉からは、主人公が「最愛の人といられる時間を少しでも延ばしたい」という意思が感じられます。
「水滴の付いた命」というのは、涙かも知れませんし、水滴のように、もう残りがわずかな命を暗示しているかも知れません。
この「滴」という漢字の熟語で、「点滴」があります。
とはいえ、この歌詞の場面は病院ではなく、自宅であることから、主人公が点滴をしているとは思いません。ただ、我々はそのイメージを連想してしまうのはないか、と考えています。
つまり、「水滴」は死期が近い命の象徴だと考えられます。
ラストサビ〜エンディング
今宵も鐘が鳴る方角は お祭りの後みたいに鎮まり返ってる
焦りを薄め合うように 私達は祈る
似たもの同士の街の中 空っぽ同士の胸で今
躊躇いひとつもなくあなたを抱き寄せる
別れの時まで ひと時だって愛しそびれないように
そう言い聞かすように
出典:アポトーシス/作詞・作曲 藤原聡
訪れるべき時が来た もしその時は悲しまないでダーリン
もう朝になるね やっと少しだけ眠れそうだよ
出典:アポトーシス/作詞・作曲 藤原聡
ここは、考察しないでおきます。みなさんはこの2人の結末はどうなったのか、曲を聴きながらぜひ考えてみてください。
考察する上で、押さえておきたいポイントとして・・・
- ラストサビに入るまでに結構長い間奏が入ること
- ここが音楽的に一番激しくなる
- 冒頭と同じ歌詞が終盤出てくること
が考えられるでしょう。
考察はここまでになります!!
【おまけ】素でFIRST TAKEをしてしまうピアノバージョン
本人のツイートにあるように、一発撮りのピアノバージョンもあります。これもいいですね〜
岩井翔平ボイストレーニングサロンでは、現在生徒募集中で、体験レッスンを実施しています。初心者の方からプロ志望の方まで、幅広くレッスンに通っています。
よく「ボイトレはプロを目指す人が通うイメージ」と言われます。
しかし、ジムにはボディービルダーだけでなく、一般の方も多く通っているように、ボイトレも気軽に通う場所であって欲しいと願っています。
声は、磨けば一生使えるもの。外見と同じくらい、相手からの印象に関わります。外見に気を遣っている人は多いですが、声に気を遣っている人はまだ少ないです。だから声を磨くだけで、一歩リードすることが出来ます。
初めはとても緊張すると思いますが、優しく丁寧にレッスンします。お問い合わせは下記のLINEか、お問い合わせからどうぞ!
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